JR東日本は、大宮駅に続いて品川駅にも2005年10月、コンコースに隣接する商業施設「ecute」を開業した=同年11月、恒成利幸撮影

 2005年3月5日。JR大宮駅(埼玉県)に、カフェや雑貨店など約70店が並ぶ駅構内の商業施設「ecute(エキュート)大宮」がオープンした。いまや買い物先として定着した「エキナカ」の、JR東日本の第1号施設だ。

 同社は、これを皮切りに駅を中心にした「生活サービス事業」に注力していく。当時の社長で、エキナカビジネスに力を入れた大塚睦毅(81)は、12年のインタビューで「鉄道の維持には、健全な経営が欠かせない。エキナカなどで収益をあげることは、インフラの維持にもつながっている」と説明した。

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 2000年代に入った日本を待っていたのは、ひたひたと迫る人口減少だった。

 バブル崩壊後の負の遺産をほぼ解消したと宣言した05年度の政府の経済財政白書は、次の構造問題の一つとして人口減少を挙げ、日本の総人口は08年を境に減少に転じる。

 今後の乗客数の伸びは期待できず、将来的に鉄道事業だけでは経営が見通せなくなることは明らかだった。

 多くのローカル線を抱えるJR九州は、分割民営化の直後から事業の多角化を進めてきた「老舗」だ。ホテルやレストラン事業のほか、オフィスビルやマンション分譲などを展開。売り上げに占める鉄道事業以外の比率は、約7割に達している。

 初代社長を務めた石井幸孝(91)は「九州だけに分割されて『このままじゃいけない』と多角化をした。コロナ禍でも赤字にならなかったのは、不動産会社で利益をあげる多角経営だったからだ」という。

記事後半では、JR旅客5社それぞれの管内の輸送密度1千人未満のローカル線を地図で紹介します。

地震、豪雨、コロナ禍… 復旧されず廃止の路線も

 だが00年代後半以降、各地…

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