英国の総選挙が7月4日に迫っています。現在の情勢では、与党・保守党の大敗が予想されます。14年ぶりの政権交代をめざす最大野党・労働党のリードは安全圏なのか。英国政治に詳しい東京外国語大の若松邦弘教授に聞きました。
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――スナク首相の解散表明(5月22日)からこれまでの選挙戦を、どのように見ていますか。
世論調査では労働党が20ポイントほどリードしており、「保守党は(定数650のうち)140議席ほどしか取れない」という分析もあります。ですが、まだわからないと私は思っています。
2017年には、保守党が20ポイントほどリードした状態でメイ首相が解散総選挙を仕掛けました。しかし、選挙戦の間に情勢が変わり、議席を減らして単独過半数を割り込む結果になりました。
「シャイ・トーリー」という言葉があります。保守党を支持しているけれど、それを表には出さない人たちのことで、一定数います。また、改革党(旧ブレグジット党)のファラージ党首が再登板したことで保守党に打撃になると言われていますが、そんな単純な話ではないかもしれません。
改革党の現在の支持者の多くは2019年に保守党に投票したのですが、(5月にあった)地方選の結果を見ると、保守党はすでに支持しておらず、逆に労働党支持に傾いていた有権者も少なくない。さらに、パレスチナ自治区ガザの情勢を考えると、イスラム教徒が多い選挙区の地方選では、労働党が昨年よりも得票率を落としている。50選挙区ほどでこうした影響が出てくるはずで、それも気になります。
――スナク氏の総選挙早期実施は得策だったのでしょうか。
スナク氏は、切り札を持っていないように見えます。保守党内すらまとめられていない状態で、「追い込まれた」というのが実情ではないでしょうか。
先日は「ノルマンディー上陸…