身寄りがない高齢者に、身元保証や死後対応などのサービスを提供する事業者が増え、トラブルも増えていることから、国は「高齢者等終身サポート事業者」のガイドラインづくりを進めています。
この問題に詳しい日本福祉大の林祐介准教授は、医療ソーシャルワーカーとして病院に勤めた経験があります。身寄りがない高齢者を受け入れることで病院側は何に困るのか。どう解決すればいいのか、聞きました。
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――身寄りがない人が入院すると、病院側は具体的に何が困るのでしょうか。
2005年から13年間、医療ソーシャルワーカーとして名古屋市内の病院で働いていました。当初はそこまで大きな問題にはなっていませんでしたが、当時から、家族や親族が保証人になっていない人に対して、入院・入所を断っている病院・施設もありました。
一方、私が勤めていた病院は、保証人がいない人でも受け入れていました。しかし、そうすると、治療が終わっても転院していただく先が見つからない。何とか受け入れてくれるところを見つけても、地元から遠くなってしまうことが多くて、ご本人から「遠いですね」という声をよく聞きました。
退院して在宅に戻るにしても、後遺症が原因で会社の寮を追い出されてしまった、あるいはエレベーターがないアパートにはもう戻れないなどの理由で、部屋の片付けや新しいアパート探し、家財道具の手配などを一からすることもありました。こうしたことも、すごく時間がかかってしまいます。
家族や親族がいればお願いできることも、病院側が全部対応することにもなりますから、受け入れるには相当の覚悟が必要です。一つの病院だけで抱えていくのがしんどいことは、私の経験からもよくわかります。
――国は、身元を保証する人がいないことだけを理由に、入院や施設入所を断ることがないように求めています。
国から入院を断ってはいけないと言われても、病院側としては「それはわかってますけど」と言いたくなる面もあるのではないでしょうか。治療が終わっても退院先がないのであれば、そのままいていただくしかありません。しかしそれでは、次の患者さんも入れない。病院は、在院日数の制約が厳しい世界でもあります。それで困ってしまう。
――一方で国は、病院が身寄りがない人を受け入れるにあたってどう支援すればいいのか、2019年にガイドラインをつくっていますね。本人の判断能力が十分な場合と不十分な場合などにわけて、考え方や、他機関への相談や連携のあり方をまとめています。
ガイドラインにしても、それができたから現実よくなっているかというと、そうでもないように思えるのです。
――内容の問題でしょうか。
結局、対応に困ったら行政や…