詩人の最果タヒさんがウェブで連載したエッセーをまとめた「無人島には水と漫画とアイスクリーム」(リトルモア)が刊行された。漫画で描かれる物語に向き合い、現実のあいまいさに目をこらして見えた「私」をつづった一冊だ。
さいはて・たひ
1986年生まれ。詩人・小説家。2008年に21歳で中原中也賞を受賞。15年、現代詩花椿賞。関西では内装に詩をあしらった「詩のホテル」や、商業施設「KYOTO TOWER SANDO(京都タワーサンド)」で和歌を現代語訳した詩のパブリックアートを手がけるなどの活動も。23年度に京都市芸術新人賞と京都府文化賞奨励賞をダブル受賞した。
10代の頃にネット上で詩作を始め、小説や百人一首の現代語訳、絵本と活動の幅を広げた。
漫画の好みも偏らない。エッセーでは「火の鳥」(手塚治虫、角川文庫)や「ポーの一族」(萩尾望都、小学館)といった名作から「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴、集英社)など最新の傑作まで25作を取り上げた。
作品紹介やマンガ論ではない。物語に身を沈めて登場人物に愛着を持ち、呼び起こされた感情と思考の過程をごまかさずに見せる。「現実で他人の人生に感情移入するのは傲慢(ごうまん)だけど、物語の中ではそうやって他者と関われる」。その気軽だがひたむきな「体験」の鮮烈さを書こうとした。
「ちびまる子ちゃん」(さくらももこ、集英社)ではまる子の気まずさから正しさとくだらなさを思い、「宝石の国」(市川春子、講談社)の主人公の姿に公平な愛情と特別な愛情を考える。残酷な暴力に満ちた舞台から優しさを、「純愛」というセリフからヒーローの怒りと凶暴さを見いだしもする。
言葉の意味を決めつけないのは
言葉に「世の中から借りてき…