今年2月に行われた最後の黒石寺蘇民祭の参加者たち=岩手県奥州市提供
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現場へ! 伝統芸能をつなぐ①

 昨年暮れ、祭り好きには衝撃のニュースが流れた。日本三大奇祭の一つとされ、千年の歴史を誇る岩手県奥州市の「黒石寺蘇民祭(そみんさい)」が2024年限りで中止されるとの発表があったのだ。「事前に話がなかったこともあり、本当に驚いた」と市歴史遺産課の川田啓介課長補佐(53)は語る。

 中止を決めたのは黒石寺の藤波大吾住職(41)だ。理由を聞きに訪ねると、「祭りの核の部分を担う檀家(だんか)さんが高齢化してしまったからです」と淡々と話してくれた。

 下帯姿の男たちが、福をもたらすという小間木(こまぎ)が納められた「蘇民袋」を取り合う争奪戦が有名な蘇民祭だが、実際には10軒の檀家が1週間前から精進潔斎し、祭りに欠かせない小間木やしめ縄などを作る作業などを行っている。「でも、檀家のほとんどは70代を超え、半分近くは後継ぎもいないので、今後もこれまで通り続けていくのは難しい。であれば、やめるのも選択肢と考えました」

 とはいえ、日本全国から約3…

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