Re:Ron連載「知らないのは罪ですかー申請主義の壁ー」第8回
「自立支援医療を利用したいんですが、会社にバレないか心配です。精神科に通っていることを知られたくないです……」
「傷病手当金を申請したいんですが、自分は契約社員なので、会社に目をつけられたら、次の契約更新ができないかもしれないと思うと心配です……」
社会福祉士としてこのような相談者の言葉を聞くとき、自分の状況を会社に知られたくないという不安や、制度を利用することで会社から疎まれるのではないかという恐れを抱えていることを感じます。
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相談者にこうした不安や恐れを感じさせてしまう背景には、私たちの社会における権利意識の希薄さや、制度に対するスティグマ(負の印)の存在があります。しかし、このような不安や恐れから制度の利用を躊躇(ちゅうちょ)することで、様々な悪循環に陥ってしまうリスクがあります。
例えば、経済的な理由から治療を控えた結果、病気が悪化し、就職活動が思うように進まなくなるといった悪循環が生じる可能性があります。加えて、周囲に相談できずに1人で問題を抱え込むことで、社会的な孤立に陥ってしまうかもしれません。
こうした状況にある人と出会うたびに「もっと早く制度を利用していれば、ここまで困った状況になることはなかったかもしれないのに」と、もどかしく感じてきました。
ここで着目したいのが、冒頭の相談者に共通する「会社」の存在です。彼らは「会社」を意識し、制度の利用を躊躇していました。しかし、この点を逆手に取ることはできないでしょうか。多くの人が長い時間を過ごす企業という場を、制度利用を促進する装置として活用できる可能性があると考えてみることはできないでしょうか。
企業だからこそできる取り組み。今回はこの点について、考えていきたいと思います。
会社の情報提供、利用の後押しに
勤めている会社から制度の情報提供を受けると、その利用が後押しされることを示すデータがあります。
ある民間団体が行った「がん…