朝日歌壇選者の(左から)永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん=東京都中央区、小林一茂撮影

 5月26日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さんです。☆印は共選作です。

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高野公彦選

 この頃は「さんぽの前田さん」と言う人いて散歩歴三十五年(中央市)前田 良一

 飯が旨いうちは大丈夫と笑ふ老珠洲の塩づくり諦めぬと言ふ(鹿嶋市)大熊佳世子

 筍を掘りて水煮を配りおり夫が一番好かるる季節(安中市)岡本千恵子

 草原に埋もれて脚を狙い撃つ狡猾(こうかつ)極まる「花びら地雷」(札幌市)田巻 成男

☆原爆の惨状描写なきことが何より怖い「オッペンハイマー」(東京都)八巻 陽子

 無住寺に並ぶ石仏その中に憂ひ帯びたる兵士を見つく(瑞穂市)渡部 芳郎

☆気がつけば入社3年目後輩に悩みもたまに打ち明けられて(富山市)松田 梨子

 キャッチャーは俯きライトは球追わぬゴジラを超える翔平の一打(観音寺市)篠原 俊則

 バイトせし茗渓(めいけい)書店すでに無く書肆(しょし)あまた消ゆ御茶の水より(さいたま市)伊達 裕子

 檳榔(びんろう)の先に鎮まる海のあり一村の絵の奥はあたたか(我孫子市)森住 昌弘

 【評】一首目、そう呼ばれて嬉(うれ)しく、ちょっと照れくさい気分なのだろう。二首目、地震の被災地で、めげることなく頑張る人たち。三首目、水煮した筍(たけのこ)は大いに喜ばれますね。十首目、奄美大島に移住して画業に励んだ田中一村(いっそん)を讃(たた)える歌。

永田和宏選

 すれ違ふ紋白蝶(もんしろち…

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