War or No War, Ukrainians Aren’t Giving Up Their Coffee
2年以上前にロシアの戦車がウクライナに侵攻してきた際、アルテム・ブラディ氏は自分の仕事は苦境に立たされるに違いない、と思った。
キーウにある「マッドヘッズ」という名のコーヒー焙煎(ばいせん)所の共同創業者であるブラディ氏は、「こんな状況で誰がコーヒーのことなんか考えるだろうか? 誰も気にかけやしないだろう」と考えたのだ。
しかし、数日すると、ウクライナの兵士たちからメッセージを受け取るようになった。ある兵士は、軍から支給されるエナジードリンクに耐えられず、ひいたコーヒー豆が入ったドリップバッグが欲しいと言ってきた。別の兵士は、豆のままのコーヒーを欲しがった。この兵士は豆をひくために、自分のグラインダーを持って前線に行った。
「本当に衝撃だった」。コーヒーをひく音が響き、ひきたての豆の香りが漂う高さ40フィート(約12メートル)のレンガ造りの建物で、ブラディ氏はそう語った。「戦下でも、人々はまだコーヒーのことを考えているんだ。自分の家を離れ、これまでの習慣を捨てることはできても、コーヒーなしでは生きていけなかったのだ」
あまり知られてはいないが、現代のウクライナには活気に満ちたコーヒー文化が根付いている。兵士たちから要望が寄せられたのも、その一断面というわけだ。
- 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」
ロシアによる侵攻後も、キーウではコーヒーショップが増え続けているそうです。コーヒーショップの取材を通じて、戦時下をたくましく生きる人たちの姿をNYTが報じています。
この10年、ウクライナ全土…