商品を紹介する長尾透さん。「豆腐こんにゃく」(皿の下部)は従来のコンニャクより白い色合いだ=2024年4月17日、長野県泰阜村、高木文子撮影
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 大豆の甘みとやわらかな食感が特徴のユニークな食品が南信州の山村で誕生した。コンニャクに凍り豆腐の粉末を練り込んだ「豆腐こんにゃく」。全国のスーパーや高級食材を扱う店にじわりと販路を広げている。「もちふわ食感」のうたい文句で、地域おこしの一助になることも目指している。

 豆腐こんにゃくは、しょうゆを付けて食べるほか、きなこと黒蜜をかけた「わらび餅風」、ドレッシングをかけた「カルパッチョ風」などの味わい方もある。

 長野県泰阜村の株式会社「ポタジェやすおか」がこの春から販売している。同社は地域おこし協力隊員として村に移住した長尾透さん(63)が、妻の有希子さん(59)とともに立ち上げた。閉校した小学校の給食室でコンニャクを製造している。

 会社は7年前の立ち上げ当初から、村に伝わる製法でつくった「昔ながらの生芋こんにゃく」を販売している。コンニャクイモの風味が豊かで、あく抜きせずに食べられるのが特徴だ。さらに4年前、凍り豆腐メーカー「信濃雪」(長野県飯田市)の粉末を練り込んだコンニャクも開発した。

 これらの商品は信州南部の農産物直売所や道の駅で販売し、さらに都市部の高級食材を扱うスーパーにも狙いを定めた。

 だが、食材を扱うバイヤーから「味はいいが(商品の)見栄えがよくない」といった声が出て、なかなか販路が広がらなかった。会社は赤字が続いたという。

 「(商品を)食べてもらえば味の違いが分かってもらえると思っていたが、それだけでは売れないと分かった」と長尾さん。昨年11月から新たな商品の開発を始めた。

 まず、凍り豆腐の粉末を多く配合して、よりクリーミーな味わいをめざした。配合を増やすと成形するのが難しくなるため、水分量とゆでる火加減を変えて試行を重ねたという。パッケージのデザインは、県工業技術総合センターの協力で一新した。「もちふわ食感」というキャッチフレーズも1カ月かけて考えて、完成したのが豆腐こんにゃくだった。

 4月にながの東急百貨店(長野市)や京都のスーパーで発売し、5月には大阪の百貨店と岩手、高知、宮崎の各県のスーパーに進出した。月間1千パックの販売をめざす。

 地域おこしのビジネスモデルをつくろうと、会社を立ち上げた長尾さん。自身の年齢をにらみ、「これから10年、20年と働くのは難しいかもしれない」と話す。「早く事業を軌道に乗せて、村に愛着をもつ人に継いでもらえるよう育成していけたら」。将来は販路をさらに広げ、村の雇用や生産農地の拡大につなげる青写真を描く。

 1個入り(120グラム)で291円。2個入りや黒蜜付きの商品もある。問い合わせはポタジェやすおか(0260・25・2075)へ。(高木文子)

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