朝日歌壇選者の(左から)永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん=東京都中央区、小林一茂撮影

 5月19日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さんです。☆印は共選作です。

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佐佐木幸綱選

 谷川岳の麓を流れる湯檜曽(ゆびそ)川轟音立てて雪代(ゆきしろ)奔(はし)る(前橋市)松村  蔚

 先住の穴より蛇の出てみれば大騒ぎされる新興宅地(神戸市)金澤  健

 日本のソメイヨシノがキーウにて白く咲きおり人集(つど)いおり(水戸市)中原千絵子

 甲冑の修理に大童(おおわらわ)今年から五月になった相馬野馬追い(福島県)守岡 和之

☆オートバイもうやめなさいと妻の言ふ月光仮面老いて従ふ(加東市)藤原  明

 六十を人生の秋だとすればもう来ないのかこの次の春(さいたま市)大浦  健

 濡れ草の印せる桜花びらを黒靴に駅の階段昇る(鹿沼市)石島 崇男

 この国が形を失いゆく姿買い物難民書店難民(観音寺市)篠原 俊則

 「よろしくね」桜の下で自己紹介これから始まるキャンパスライフ(東京都)増田 麻美

 赤ん坊抱くような手で絹漉(ご)しを掬(すく)いし店主の閉店の文字(寝屋川市)今西 富幸

 【評】第一首、視覚的にも聴覚的にも。湯檜曽川を表現した下句の表現、みごと。第二首、先住者である蛇が、後から来た人間に騒がれて困っている場面。こういう見方もあるのだ。第三首、キーウの桜のニュースを私も読んだ。四句切れにして、うまい。

高野公彦選

 「プーチ・ダモイ」のスカー…

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