中島岳志・東京工業大教授

 非常事態などに国が地方自治体に対応を従わせる「指示権」の拡大は必要なのか。国会で審議が本格化している地方自治法改正案を巡り、政治学者の中島岳志・東京工業大教授は、国による地方の「統制」の流れが強まりかねないと指摘する。

 Q 国の「指示権」拡大は、何が問題ですか。

 A 2012年に誕生した安倍内閣以降の自公政権は、憲法や法の慣習をないがしろにしてきた。そうした政権と、「恣意的運用」の関係が、今回の問題の本質だ。

 思い起こしてほしいのは15年、野党が臨時国会の開会を求めたのに、当時の安倍政権が国会を開かなかったケースだ。憲法53条は「衆参いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と規定しているにもかかわらず、「いつまでに」という日数が明記されていないことを盾に、安倍政権は国会開会の要求を拒んだ。

 日本国憲法は条文が短いが…

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