太平洋戦争前の1939(昭和14)年、約1万2千個の真珠をちりばめた鐘がニューヨーク万博で展示され、「百万ドルの鐘」と言われ、米国人を驚かせた。真珠養殖に生涯をかけた現三重県鳥羽市出身の御木本幸吉(1858~1954)が平和を願って作らせたとされる。来年の大阪・関西万博で三重県のブースの目玉として改めて特別展示される。
鐘は銀製で高さ約36センチ、直径約39センチ、重さ約10キロの工芸品。表面を1万2250個の真珠が覆い、366個のダイヤモンドが配されている。
1776年の米国の独立宣言で打ち鳴らされた「自由の鐘」を3分の1サイズで模したという。実際の鐘にあるひび割れは青色の真珠で表した。
鐘が製作され、ニューヨーク万博で展示されたのは太平洋戦争が始まる2年前のことだ。中国で戦線を拡大し全面戦争に突入した日本と、撤退を求める米国とは関係が悪化していた。
「世界の真珠王」と言われた御木本は「日米関係を改善させたい」と万博に合わせ、平和への思いを込めた豪華な鐘を作らせたとされる。
厳しい世界情勢だからこそ 「平和願う鐘を万博で」
朝日新聞は39年1月、鐘を「まことに素晴らしいもの」と述べ、米国に送る前の2月、東京・上野で一般向けに展示することを宣伝した。
5月には、開幕した万博の日…