第1回口頭弁論後、記者会見で涙を拭う母親=2024年5月10日、福岡市中央区六本松4丁目、上月英興撮影
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 東海大福岡高校(福岡県宗像市)の剣道部の男子生徒(当時17)が2021年に自殺し、いじめたとされる当時の先輩4人に生徒の母親が損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、福岡地裁(加藤聡裁判長)であった。法廷で母親は「どれだけ心に深い傷を負わせ、尊厳を踏みにじったのか、言葉では言い表せない。被告らにはしたことの責任を取ってほしい」と意見を述べた。

 原告側は生徒の名前を「侑大(ゆうだい)」と明らかにしている。訴状によると、侑大さんは入学直後の19年4~6月、被告を含む部の先輩から、体を縛られて殴られたり、わいせつな行為をされたりし、撮影した動画をSNSで送信された。こうしたいじめが「自死に至らしめるほど強い精神的苦痛を与えた」と主張している。

 母親は時折、声を震わせて約20分間、意見を述べた。侑大さんが突然寮から帰宅して「死のうと思ったけど死ねなかった」と泣き出し、いじめを打ち明けられたと説明。わいせつ行為などを同校の調査で知ったといい「侑大の気持ちを想像すると、苦しくてたまらず、悔しさと絶望で体が引き裂かれるような気持ちになる」と語った。

 被告らに対しては「侑大にしたことは悪いことだったと心に刻み、侑大にしたことを忘れずに生きていってほしい」と訴えた。

 弁論後の記者会見では「侑大の笑顔や、みんなで話して楽しく剣道をやり、仲間で集まっている姿を思い出して陳述した。被告たちがやった行為は許されないことだと少しでも理解してほしい」と話した。

 一方、被告側はいずれも請求棄却を求める答弁書を提出。うち被告1人は「自死は被告の行為と因果関係はない」などと主張した。残る3人は今後、具体的な主張をするという。学校によると、いじめに関わった1人は、家庭裁判所の少年審判で強制わいせつの非行内容が認定され、2年の保護観察処分とされたという。

声を震わせ、20分間語った思い

記事の後半では、侑大さんの母親が訴えた意見陳述の主な内容を詳しく紹介します。

 この問題を巡っては、同校が…

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