長引く物価高に家庭から悲鳴が上がるなか、物価の安定を担う日本銀行は、物価を上げるための低金利政策を続ける。一方で政府は、「デフレからの脱却」を掲げながら物価高対策の強化をアピールする。政府・日銀の政策のちぐはぐさが続いている。

写真・図版
東京都内のスーパー「東武ストア東雲店」では、食料品や日用品の値下げが強調されていた=2024年10月19日、東京都江東区

 物価高に対する不満の声は、収入の水準にかかわらず、聞こえてくる。

 川崎市に住む栄養士の女性(42)は「物価が上がったせいで、共働きでも生活に余裕が感じられない」と嘆く。

 夫と母親、中学1年、小学4年の子どもの5人暮らし。手取りは2人合わせて50万円程度ある。それでも、物価高で月々の食費が15万円ほどに膨らんだほか、住宅ローンの支払いに10万円超、電気代や水道代などの光熱費でも7万円ほどかかるなど出費が多い。生活費のやりくりのため、カードローンでお金を借りることも増えた。

 2年ほど前から、子どもが通う塾代が3回値上がり。2人で月4万円程度かかり、夏や冬の講習があれば月10万円程度かかることもある。別々の塾に通わせていたが、「きょうだい割」を使うために、同じ塾に転校させた。

 子どもは高校受験で、私立の大学付属高校を狙う。「子どもの将来のためのお金だから、削りたくない」。2人の給料も上がっているが、物価高に追いついていない。「物価を下げて、生活を楽にして欲しい」

「自立難しい子を持つ生活の苦しさを…」

 横浜市に住む女性(55)は、飲食店と介護ヘルパーを兼務して土日も働く。「物価高で少しでも多く働かないと、手元のお金が無くなってしまう」。手取りは15万円ほどで、貯金を取り崩す生活だ。4人いる子のうち1人は高校生で、上の3人はすでに働いている。だが、収入が少なく、いまも同居している。

 建設現場のアルバイトで働く…

共有