
バターチキンといったカレーにあう、もちもちとした食感がたまらない「ナン」。日本に数多くあるインド料理店の定番メニューだ。ところが、本場インドの家庭ではナンは日常的に食べられていない。なぜ日本で定着したのか、探ってみることにした。
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3月上旬、首都ニューデリーの街中にある屋台をのぞくと、男女のお客さんが、数種類のカレーが入った100ルピー(約170円)の定食を次々に注文していた。
定食には、小麦粉などの生地を発酵させて焼くナンか、チャパティ(ロティ)と呼ばれる全粒粉を使った薄いパンのどちらかを選べる。ナンは2枚、チャパティは4枚もらえる。
首都近郊に住むインド人のご自宅や式典で食事をすると、毎回のように出てくるのがこのチャパティだ。ナンより食物繊維やミネラルなどが豊富で、消化に良いとも言われる。
店主のジテンデル・グプタさん(40)は「空腹を満たしたい時や健康に気を使っている人はチャパティ、特別な日やおいしさを求める時はナンを選ぶお客さんが多い」と教えてくれた。
ナンを選んだニラムさん(51)たちに話しかけると、「自宅ではほぼ毎日、チャパティを食べているので、今日はナンにしました」。ナン作りにはタンドールと呼ばれる大きな窯が必要で、維持費もかかるため、一般的な家庭に置くのは難しいのだという。
それに対し、フライパンでも作れるチャパティは、インド北部を中心に日々の食卓で愛されてきた。ちなみに南部では、カレーのお供はナンやチャパティではなくお米だ。
一方、インド・ネパール料理店が数千店舗もあると言われる日本では、多くの店でナン付きのカレーを提供している。
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日本に40年以上住み、「リトルインディアの父」とも称される「江戸川インド人会」会長のジャグモハン・チャンドラニさんに、なぜここまでナン文化が広がったのか聞いてみた。
すると、「日本人はふわふわしたものが好きでしょう」と即答したうえで、「1970年に開かれた大阪万博で、タンドール窯で焼いたナンが提供された影響もあると思います」と語った。
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