
東京電力福島第一原発事故後の除染で出た、放射性物質を含んだ土や廃棄物である「除染土」は2045年3月までに福島県外に搬出して最終処分すると法律で定められている。だが、県外で理解は進んでいない。現状について、東日本大震災14年のインタビューに応じた内堀雅雄・福島県知事に聞いた。
県外搬出の約束
震災直後、国は土などを県内で最終処分する構えだったが、当時の佐藤雄平知事は反発。11年8月、菅直人首相は中間貯蔵施設の建設に切り替えて提案した。内堀知事は当時の副知事だった。佐藤知事は国と地元との間で板挟みになったが、最終的に「搬入後30年」という条件で受け入れ、15年3月から大熊、双葉の両町にまたがる中間貯蔵施設に土の運び入れが始まった。
――県外搬出期限まで20年を切る。この10年の国の取り組みをどう評価しますか
県外最終処分は、中間貯蔵施設を受け入れる苦渋の決断の前提として約束した国の責務です。必ず実現されねばなりません。搬入開始時は10万人を超える県民が避難を余儀なくされ、困難な状況でした。10年で県内の環境回復は進む一方で、大熊町と双葉町は重い負担が続いており、町の将来を不安視する切実な声も上がっています。
残された期間は限られています。国は、方針や工程を速やかに明示し、県民や国民に見える形で進捗(しんちょく)管理を行いながら、政府一丸となって進めるべきです。
記者団の質問かわした知事
最終処分量を減らすため、国は公共事業の資材としても土を再生利用する方針だが理解が広がらない。しびれを切らせた地元・双葉町の伊沢史朗町長は先月24日、まず町内で利用する意向を表明した。県外搬出するはずの土を県内で使うことには「事実上の県内最終処分だ」との批判がある一方、浅尾慶一郎環境相は「法律上は問題ない」とする。内堀知事は24日に記者団から「県内での再生利用は可能と考えるか」と質問されたが、「国から再生利用の話はない」「(双葉町の再生利用について)具体的な内容はないことを伊沢町長から確認した」と述べるにとどめ、回答を避けていた。
――ここで改めて聞きます。県内での再生利用は可能だと考えますか
再生利用は県外最終処分に向けた取り組みの一つです。昨年12月の閣僚会議で林芳正官房長官から、再生利用を推進する取り組みを進めるよう指示がありました。先も話しましたが、県外最終処分は必ず実現されなければなりません。
――県内での再生利用について言及がないのは、いまは語るべき時期ではないと考えているのでしょうか
伊沢町長自身が具体的な検討をしているわけではない状況だと言うことに尽きると思います。
県外搬出に半信半疑、「そのまま処分を」の声も
中間貯蔵施設に土地を提供した人は2千人以上にのぼる。だが、住民帰還の前提となる目前の福島第一原発の廃炉は難航し、土の県外搬出にも半信半疑の人は多い。地権者に統一団体はなく集団として意思が示されることはないが、土の搬入翌年の2016年に避難住民を対象にした朝日新聞と福島大学の共同調査によると、県外処分の約束が「守られると思う」と答えた人は2%にとどまっていた。
――知事や町長たちは県外処分を求めて一致していますが、実現を疑っている人やこのまま土を地元で処分してもよいと言う人もいる。こうした人たちに何を語りますか
県外最終処分の認知度はいまだ低い状況にあります。国は科学的な知見に基づく正確な情報をわかりやすく説明するなど、丁寧な対応が必要です。私も、双葉町長から直接、本当に県外処分が実現できるのかという強い危機感を持っていると聞きました。双葉町や大熊町が県全体の復興を考え、辛く重い判断をされたが、住民からすれば、なぜ自分たちなのかという強い思いがありました。県も、こうしたジレンマ、葛藤を感じながら、両町とともに悩み苦しみながら苦渋の決断を行いました。国は、伊沢町長の危機感を重く受け止めていただきたいと考えています。
インタビュー後、知事が語りたがらない理由を考えた
双葉町長発言で注目された県…