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再審の初公判を終え、記者会見する前川彰司さん=2025年3月6日午後、金沢市、金居達朗撮影

 39年前に福井市で中学生を殺害したとして、殺人罪で有罪判決を受け、一貫して無実を訴え続けた前川彰司さん(59)の再審公判が6日、名古屋高裁金沢支部で始まった。

 検察側が一審・福井地裁の時点でその存在を知りながら隠し続けた証拠が、起訴から35年以上たって開示され、再審の扉を開いた。なぜ、無実を訴える人をこれほど長い期間、苦しめ続けることになるのか。専門家は、再審についての法制度の不備を指摘する。

 「重要な証拠が第1次再審請求の中で開示されていたら、遅くとも(1度目の再審開始決定が出た)2011年の時に(無罪が)確定していたかもしれません」

 6日の再審公判。弁護団の寺田昇市弁護士は、前川さんが逮捕されてから38年もの間、冤罪(えんざい)に苦しむ「原因」の部分に力を込めた。

 寺田弁護士は、事件発生当時高校2年生。弁護士になってすでに10年以上の月日が流れた。公判後の記者会見では「前川さんがずっと冤罪被害に苦しんでいたのは非常に長いな、という思いで、どう伝えるべきか工夫した」と話した。

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なぜ、長い時間がかかるのか

 昨年再審で無罪が確定した袴田巌さんも、逮捕から58年、無実を訴え続けた。再審までにこれほど長い時間がかかる背景として、刑事訴訟法の再審に関する規定が長年改正されないままだとの指摘がある。

 例えば証拠の開示。通常の刑…

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