
100億年たっても1秒未満のずれしか生じないという「光格子時計」。世界で最も正確とされる時計の小型化に島津製作所(本社・京都市)が成功し、5日、受注生産による販売を始めると発表した。そのお値段は――。
同社によると、光格子時計はストロンチウム原子時計の一種。魔法波長と呼ばれる特殊なレーザー光で、卵パックのような格子の中に原子を閉じ込めて振動を抑え、時間のずれを少なくする。現在の「秒」の基準となっているセシウム原子時計の100倍以上の精度の高さを誇る。
アインシュタインは一般相対性理論で、地球の中心から離れれば離れるほど重力が弱くなり、時間が早く進むことを明らかにした。光格子時計を考案した東京大の香取秀俊教授らの研究グループは2018年、この光格子時計を東京スカイツリーの展望台と地上の2カ所に置いて、時間のずれを計測することに成功した。
重力差による時間のずれを正確に計測することで、地殻プレートの上下方向のずれを1センチ単位で計測できるようになるなど、将来的には地震や火山活動の予兆を早期検知できると期待されているという。
香取教授が「イーサクロック」と命名した光格子時計は、装置容量が250リットル、重さは200キロ。東京スカイツリーでの実験に使った光格子時計の約4分の1のサイズまで小型化し、運搬しやすくなった。
希望販売価格は、1台5億円。今後3年間で10台の販売をめざす。国内外の研究機関からすでに引き合いがあるという。
記者会見した島津製作所基盤技術研究所の西本尚弘所長は「光格子時計は、地震予知に役立つなど大きな可能性を秘めている。引き続き、科学技術の発展に貢献していきたい」と話した。