
現場へ! 震災とオシラサマ(2)
農家の土蔵を移築して造ったという、小さなお堂の入り口をくぐると、なぜか涼やかな風が吹く。
岩手県遠野市の歴史博物館「伝承園」にある「オシラ堂」には、約1千体のオシラサマが納められている。
その昔、美しい娘が飼い馬に恋をした。激怒した父親は馬を木につるして殺し、悲しんだ娘が馬の首にすがりつくと、首は空高く舞い上がって娘を天へと連れていってしまった――。
民俗学者・柳田国男の「遠野物語」でも紹介された民間信仰を一目見ようと、今も多くの観光客らが「オシラ堂」に足を踏み入れる。
語り部の立花和子さん(78)は「娘は死後、父親の枕元に立ち、蚕を授けて育て方を教えた。それが養蚕の由来になったとも伝えられています」。良いことを伝えてくれる「オシラセ神」としても信仰されているという。
北東北に広く分布するオシラサマは、各地でその特徴が大きく異なる。
材質も桑の木だったり、竹だったり。娘や馬の顔が彫られているものもあれば、布で頭をすっぽりと覆われているものもある。名称も「オッシャサマ」や「オシラガミ」、「オシラボトケ」や「オコナイサマ」と様々だ。
昨年5月16日、青森県弘前市の久渡(くど)寺を訪ねると、「オシラ講大祭」が開かれていた。
津軽地方におけるオシラサマ…