
核兵器禁止条約第3回締約国会議が3月3日から米ニューヨークで開かれる。核兵器使用の懸念が高まるなか、トランプ米大統領はロシアや中国との核軍縮の協議に意欲を示す一方、自国の核戦力を増強する可能性が高いとみられている。核軍縮の課題や見通しを米シンクタンク「軍備管理協会」のダリル・キンボール会長に聞いた。
Daryl Kimball 1964年生まれ。超党派の米シンクタンク「軍備管理協会」(ACA)会長。歴代の米政権に核軍縮政策を提言してきた。
――トランプ政権2期目の核軍縮の行方をどう見ますか。
米ロ間に唯一残る核軍縮条約、新戦略兵器削減条約(新START)はバイデン政権時に5年延長されましたが、再延長の規定はなく、来年2月に失効します。失効後、米ロとも核兵器の実戦配備を増やす可能性があります。同条約では、(射程の長い)戦略核の実戦配備弾頭数を双方とも1550発以下、配備済み運搬システムを700以下に制限しています。制限がなくなれば、備蓄済みの弾頭を配備することで失効後2、3年で米国は、実戦配備弾頭数を3500発、ロシアは3千発まで増やす恐れがあります。
主な理由は、ワシントンの保守強硬派が中国を抑止するために核兵器の配備を増やすべきだと考えているからです。中国を抑止する目的で戦略核を増やせば、ロシアも同様に増加して対抗するでしょう。中国も配備を加速し、1千~1200発まで増やそうとするかもしれない。つまり核軍拡のスパイラル(悪循環)に陥ります。
――トランプ氏は1期目に新STARTを「悪い取引だ」と批判し、射程が短い戦術核を対象に加えることや、中国の参加を要求しました。米ロが新STARTに代わる新たな核軍縮条約を結ぶことは可能でしょうか。
米ロ首脳会談が3月か4月に…