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鍋物など冬の食卓に登場する菊菜(春菊)。大阪府が日本一の産地で、生でも食べられることはあまり知られていない。府は大学生や飲食店と連携し、菊菜の魅力発信に取り組んでいる。
菊菜は府南部の泉州地方を中心に栽培されている。府などによると2023年の出荷量は3040トンで、出荷量は5年連続全国1位。生で食べやすいのも特徴という。
ただ栽培農家は少しずつ減っている。消費者へのアンケートでは、大阪が出荷量日本一だと知っている人は約2割にとどまり、生で食べられることも広く知られていなかったという。
府は昨年5月、食による地域活性化などを研究している追手門学院大経営学部(茨木市)の村上喜郁教授に相談。村上教授のゼミで学ぶ3年生と2年生の6人に菊菜の「プロデュースプラン」を練ってもらった。
学生の多くは大阪出身で、当初は「家族が苦手で食べたことがなかった」「何か分からず食べてたかも」などと語っていた。学生は7月に、府立環境農林水産総合研究所を訪れ、どのように栽培されているかを見学。試食もして「大阪産は苦みが少なく食べやすい」と実感したという。
8月には市場関係者や飲食店と意見を交わした。ジェノベーゼソースなどの加工品を開発する、菊菜の動画を見ながら飲食店で菊菜料理を味わってもらう、などのプランをまとめた。
「まごころ料理つる井」(大阪市住吉区我孫子3丁目)と「山海料理仁志乃」(堺市西区平岡町)の2店は、学生の案などを踏まえてメニュー作りに取り組んだ。
つる井は「菊菜を入れただし巻き卵」「菊菜を芯にした白身魚の巻物の酢の物」など3品を作った。店主の澤井哲治さん(46)は8月に学生の取り組みを聞き、「むちゃくちゃいいこと。応援したくなった」と話す。秋にオンラインで学生とやりとりし、料理を考えた。料理では火を通しすぎず、菊菜の香りと味を残すことを心がけたという。
仁志乃は「泉州きくなと岸和田地蔵浜産しらすのかき揚げ」などを出している。「いろんなことに使える野菜。軸や葉の先など部位によって味、香りが異なり、食感を考えて用いている」と代表取締役の西野保孝さん(63)。
学生は、秋には菊菜などを販売する催しに参加。菊菜の紹介動画は春ごろの完成を目指している。メンバーの1人で同大3年の田中遥菜さん(21)は「大半の学生が実際に食べると『おいしい』と言ってくれる。もっと若い世代に良さを伝えていきたい」と意気込む。
府は「泉州きくなプロジェクト」も展開し、認知度向上に力を入れている。
2店の菊菜メニューは、単品やコースメニューとして味わえる。3月以降も提供を続けるという。食材の入荷状況などで変更の可能性はある。