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それぞれの最終楽章 父を看取って(7)
朝日新聞記者 佐藤陽
僕たちは、入院中の父に「延命治療」はせずに、自然な形で看取(みと)る方向で心を決めていた。
ところが、ここでまた「奇跡」が起きた。父が肺の水を抜く処置をしたのが良かったのか、徐々に口から食べられるようになったのである。そして昨年2月15日、無事退院し、念願の介護付き有料老人ホームに戻ることができた。
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ホームに戻ると、スタッフたちは「寛(ひろし)さん、お帰りなさい」と出迎えてくれた。
さすがに食事は、完食というわけにはいかなかった。それでもだいたい5割程度は食べた。当初は、食事介助が必要な入居者たちが集まる2階で食べていた。「でもこれだけ食べられるなら、1階の食堂でみんなと一緒に食べられるようになるかも」と担当ケアマネジャーの戸澤雅樹さん(64)は思ったという。
だが3月に入ると、少し様子…