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弁護士に宛てた手紙で裁判のやり直し(再審)などを依頼する部分が黒塗りにされたとして、死刑囚が国に約60万円の賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(横田典子裁判長)は28日、国に6万6千円を賠償するよう命じた。裁判に触れた部分の黒塗りには「漫然と抹消した注意義務違反がある」と判断した。
原告は2015年に大阪府寝屋川市の中学1年の男女を殺害したとして死刑が確定し、大阪拘置所に収容されている山田浩二死刑囚(54)。22年6月、死刑囚の処遇の問題に詳しい弁護士に手紙を書いたところ、大部分が黒塗りにされた。
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判決はまず、死刑囚が外部とやりとりできる範囲を限定した刑事収容施設法の解釈を検討。親族や「心情の安定に資する」人とともに認められる「重大な用務の処理のため発受する信書」について、条文で例示されている「訴訟の遂行」は進行中の裁判に限られず、訴訟に向けた「相談や協議」も含まれるとした。
その上で「いろいろと相談したいので再審請求弁護人になってほしい」「外部交通や処遇の件で国賠訴訟の準備を進めている。その力になってほしい」「再審請求弁護人宛ての手紙が抹消される。完全な嫌がらせだと思う。何とかしてほしい」などの黒塗りは違法と判断した。
国側は手紙の中身が「具体性を欠く」などと反論していたが、判決は「弁護士に再審請求の受任を希望していることや、国家賠償について法的アドバイスを求めていることを明確かつ容易に読み取れる」と指摘。こうした手紙の内容は「訴訟の遂行と同様に重大な用務の処理のために必要なもの」だと結論づけた。