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ミュージカル界のレジェンドに歴史を聞き出すトークショーを昨秋に再開した。「商業演劇の、消えて無くなる感があんまりにもはかないから」=東京・日比谷の帝国劇場、友永翔大撮影

 ミュージカル界のプリンスと呼ばれてきた井上芳雄さんは、以前から「日本のオリジナルミュージカルをつくる」目標があります。自身の将来と合わせて、展望を聞きました。

世界で戦うために 韓国で感じたもの

 ――いまの演劇界で、ミュージカルは公演数、観客動員とも右肩上がりのようです。

 お客さんの数は世界でもニューヨーク、ロンドン、東京って言われるぐらい市場が大きいんですよね。自分たちがやってきたことが形になって見えてるのはうれしいんですけど、コロナ禍で一回ばっと止まって。またいま盛んになって、大作とか有名な作品にはお客さんが来るけれども、チケット代が高いし、初めてやるもの、名前が売れてないものはなかなか手が出しにくい現状もあります。

 去年、韓国に5年ぶりぐらいに行ったんです。ミュージカル界がすごく進んでて、いつの間にこんなに進んじゃったんだっていうぐらい。レベルも、作品づくりの状況も全然違ってて。

 自分たちは、別にのほほんとしてたつもりはないんだけど、市場がある程度あるだけに、そこに甘えてるんじゃないかなという。外を向いてないというか、ややガラパゴス化してるというか。演劇って他者とつながるもんだから、他国ともつながる方がいいし、もうちょっと自分たちは開けていけるんじゃないかな。韓国を見てると、もっと長期的に見てるし、国が援助してクリエーターを育てるところから始まる。その視点が自分たちには足りなかったんじゃないかな。そういう反省もありますね。

 自分も含めてなんですけど、ミュージカルに関する系統だった学びをしてこなかった。それが日本の演劇界の特徴でも、いいとこでもあると思うんですよ。大人計画の人がいれば、宝塚の人がいて。演技の違いも面白いんですけど、ミュージカルにおいては、もうちょっと共通のメソッドだったり、認識があった方が、世界で戦えるものが生まれるんじゃないかな。

 日本では作詞作曲家が生まれにくいし、学ぶところがまずない。この前東宝で「ソングライターズショーケース」という催しをして、やっと動き出したのかな。

 韓国は大学にミュージカル科がたくさんあるみたいですし、欧米に留学してる人も多いし、韓国に戻ってきて教えてるので、共通したメソッドなんですよね。効率がいいんだと思います。日本は、すごい才能が突如生まれてくるかもしれないけど、才能が飛び抜けていなくても、ちゃんとしたメソッドがあれば底上げできると思うんですよ。観劇人口や演者人口の広がりにもつながるし、自分に合った方法を選べばいいんですね。その視点が足りなかったなあって、去年すごく思いましたね。

ミュージカルって若者のもの じゃあ…

 ――ミュージカル界の問題意識をもち、あるべき姿を考えていますね。

 韓国もいろんな事情で、「ミュージカルが輸出産業になるんじゃないか」っていうもくろみがあるんですよ。

 僕は自分が単純にいい作品や…

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