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青菜鉢=島村温子撮影

 野菜の食べ方がなんとなくマンネリ、あるいは自分の料理にどこか納得いかない、という方へ。東京・浅草で四川料理店を開く荻野亮平さんに、中国各地で覚えた野菜料理から、おすすめを教わります。材料も手順も「これだけ?」というシンプルさで、知っている冬野菜の違う魅力が味わえます。

野菜の水分でシャキッともしっとりも

 小松菜で2品。スーパーで買ったひと袋(約300g)を使って、四川料理の「青菜鉢(チンツァイボー)(きざみ青菜炒め)」と、上海料理の「菜飯(ツァイファン)」を作る。

記事の後半で、「青菜鉢」と「菜飯」の詳しいレシピを紹介しています。

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これで小松菜約300g=島村温子撮影

 「青菜鉢」は塩味の炒めものだ。四川ではチンゲンサイ、アスパラ菜、つぼみ菜などを使い、軸も葉も細かくきざむことで、食べ心地が軽くなる。小松菜のクセのない味と食感にもよく合う。

 「四川で野菜をきざんで炒める調理法は一般的。漬物をきざんでひき肉と合わせるのも人気です」と荻野さん。

 使う油は少量で、味付けは塩だけ。ただし、おいしさを作るポイントが二つある。

 ひとつがたっぷりの香り。四川には特産で風味のいい菜種油があるが、今回はゴマ油を使った。粗みじんのニンニクを弱火でゆっくり温めて、香りを立たせていく。

 もうひとつが、塩を加えるタイミングで、小松菜をフライパンに入れたらすぐ塩をふる。出てくる水分が蒸気になるのを利用することで、熱が全体に回って、できあがりはしっとり。冷めてもおいしく食べられる。

 「強い火力を使わず、いつものフライパンで作りやすい料理だと思います」

 もう一品の「菜飯」は、肉のうまみを加えて炊いたご飯を、炒めた青菜と合わせてある。チャーハンのような、混ぜご飯のような味わいで、小松菜の緑とかすかな苦みがアクセントになっている。

 上海では小さな青梗菜のような鶏毛菜(ジーマオツァイ)と干し肉、油はラードで作るレシピを、小松菜とサラミに置き換えた。ご飯はサラミをのせて炊くだけなのに、塩気と脂、くんせいの香りがつくことで、味に奥行きが生まれる。サラミをベーコンに変えてもいい。

 荻野さんは、レストランの味は香りやうまみを重ねて驚きを呼ぶもの、家の味はシンプルで安心できるもの、と分けて考えている。「つける塩味も、家なら少し薄く感じるくらいが飽きがきません」

教える人 荻野亮平さん(四川料理巴蜀)

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=島村温子撮影

 おぎの・りょうへい 1978年大阪生まれ。東京・浅草「四川料理 巴蜀(はしょく)」店主。この一年は信州大学に社会人大学院生として通い、四川の唐辛子の漬物の発酵と辛みについての研究論文を書いた。

■青菜鉢(きざみ青菜炒め)

 【材料・2人前】 小松菜200g、ニンニクの粗みじん切り・ゴマ油各小さじ1、塩ふたつまみ

 【作り方】

①小松菜は幅1㎝に切る。ニンニクは粗みじんに切る。

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小松菜は軸からきざむ=島村温子撮影

②フライパンにゴマ油とニンニ…

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