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トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領が停戦交渉の開始で一致する一方で、米国はウクライナの安全保障のための部隊には参加しないと明言しています。2021年11月まで駐ウクライナ大使を務めた倉井高志・成蹊大学特別客員教授は「停戦合意にはウクライナの人々が再び攻撃を受けないためのメカニズムが必要だ」と語ります。
――現在の戦況をどうみていますか。
ウクライナ領内の戦況は総じてロシア側がやや優勢に推移する一方で、欧州全体の戦略環境という面では、むしろ北大西洋条約機構(NATO)が優勢になっていくと思われます。
後者については、まず欧州における米国との核共有が強化されます。米戦術核を搭載する欧州戦闘機は従来、トルネード、F16などの第4世代機でしたが、30年ごろまでにトルコを除く核共有4カ国で第5世代のF35Aステルス戦闘機に順次置き換わります。ドイツに配備された米陸軍の多領域任務部隊(MDTF)には、来年から地上発射型巡航ミサイル「トマホーク」と対空ミサイル「SM6」の配備が始まる予定です。
また、スウェーデンとフィンランドがNATOに加盟したことでバルト海はほぼ「NATOの海」となって、ロシアのバルト艦隊の行動は大いに制約を受けています。ムルマンスクに司令部をおくロシア最大の艦隊である北洋艦隊も、ロシアのウクライナ侵攻以降、米英による近海での哨戒活動の強化に直面しています。
ロシアとの交渉においては、このような戦略環境面での優勢をカードとして利用しつつ、制裁とウクライナ支援を継続すべきですが、少なくとも現時点で、トランプ氏はそのような発想に立っていないと見られます。
――停戦交渉のポイントは。
■「現時点でのトランプ氏の認…