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- 【連載】去りゆく人びと 消えゆく希望 ウクライナ侵攻3年
ウクライナの民放記者、ソロミア・ルコベツカさん(30)の銀行口座には、毎月6万フリブニャ(約21万5千円)が振り込まれる。
2歳年上の夫、兵士のビタリーさんが行方不明になっていることに対する給付金だ。
キーウの大学生だった2018年に出会った。4カ月後には一緒に暮らし始め、21年6月に結婚した。妊娠がわかったのは、22年1月のこと。夫は喜び、「息子がいいな」と言った。
だが、翌月、ロシアによる全面侵攻が始まった。
以前から軍に所属していた夫はすぐに徴兵事務所に行き、戦地へ。ルコベツカさんは西部リビウ州の町へと避難した。いまもキーウとは別に拠点を置いている。
おなかはどんどん大きくなり、22年9月、息子が生まれた。マトビーと名付けた。立ち会ってほしかったが、そんなことは頼めなかった。
それでも生後すぐ、夫は戦地を離れて会いにきてくれた。一時も離れようとせず、「2人目の子もほしいな」と言った。
息子が初めて「ママー」と声を出した翌月の23年4月、夫は東部戦線の部隊に移った。赴任地はドネツク州の激戦地バフムート。それでも毎日、ビデオ電話をかけてきた。息子が寝ている時間でも、寝顔を見たがった。
そんな日々が、突然、終わりを告げた。
23年5月3日午前5時。秘…