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昨年の興行収入で、海外の実写映画が2000年以降で初めてトップ10入りを逃しました。日本では20年ほど前から「洋画離れ」が進んでいますが、ここ数年、その傾向が顕著になっています。
著書に「ハリウッド映画の終焉(しゅうえん)」があり興行にも詳しい映画評論家の宇野維正さんに、ハリウッドと日本でいま何が起きているのか、尋ねました。
日本映画製作者連盟(映連)によると、昨年は邦画の興行収入が、映連が興収を発表するようになった2000年以降で過去最高の1558億円を記録しました。その一方で、洋画の興収は511億8300万円で、コロナ下の20、21年を除いて過去最低でした。特に顕著だったのが洋画の実写の低迷です。これから日本における洋画はどうなってしまうのでしょうか――。
- 洋画の興行収入、前年比3割減で続く「邦高洋低」 昨年1位はコナン
――ハリウッド大作が最近、日本で話題になっていないように感じます。
いまのハリウッドが衰退期であることを前提にした方がいいと思います。〝映画の危機〟のような言説は歴史的に何度も繰り返されていますが、少なくともハリウッドの実写映画はかつての産業的なダイナミズムを失ってしまった。
――衰退期、ですか。
例えば、3月2日(現地時間)に授賞式がある米アカデミー賞。作品賞にノミネートされている10作品のうち、北米での興収が1億ドル(約150億円)を超えているのは「ウィキッド ふたりの魔女」「デューン 砂の惑星PART2」のみで、いずれも本命視されていません。ほかの8作品の興収は昨年の「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」(日本で興収158億円)より少ない。
20年に「パラサイト 半地下の家族」が作品賞を受けるなど、大作でない映画の受賞が以前から続いてはいますが、それにしても今年のラインアップの地味さたるや。
ディズニー作品や人気シリーズの続編など、元々売れる地盤のある作品は、いまも変わらず良い興収成績を挙げています。けれどロサンゼルスの市内に行けば、宣伝の看板はネットフリックス、アマゾン、ディズニーなどの作品ばかり。質の高い実写映画を作り、大ヒットさせる、かつてのハリウッドではもはやないと感じてしまいます。
「イベント化しない映画」の不発
――北米では映画全体の興収が大幅に下がったわけではありませんが。
ヒットの中身が違うんです…