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「気をつけて下さい。山林火災の現場はすぐそこです」
21日午後3時半過ぎ、大規模な山林火災が発生した岩手県大船渡市三陸町。田浜漁港から火災現場へと続く山道を警備していた警察官に声をかけられ、延焼中の山林に最も近い集落に入った。
家々は火災の煙に包まれ、前が白くかすんで視界が利きにくい。集落に人影はなく、周囲には焦げくさい臭いが漂っていた。上空は消火作業のヘリコプターがバリバリと音を立ててひっきりなしに飛び交っている。
さらに山道を登ること約5分。消防隊が地上における消火活動を展開しており、「安全を確保できません。取材はここまでにしてください」と制された。
火災現場から約2キロ離れた綾里漁港周辺では、消防団員らが河川から消火用の水を防火水槽へとくみ上げる作業に従事していた。消防団の花崎龍二さん(48)は「火災が民家に迫ってきていると聞いている。先が見えないが、少しでも早く火を消し止めたい」。
火災現場はリアス海岸の半島部分。湾を挟んだ対岸では多くの周辺住民が集まり、消火作業を見つめる。近くで山仕事をしているという林業、上野盛雄さん(83)は「ここまで大きな山火事は珍しい。何が原因だったのか。人々の不安を解消するためにも、一日でも早く消し止めてほしい」と心配そうに語った。
日没が近付き、ヘリコプターなどによる消火活動が中断されると、火の勢いが強まり、徐々に延焼が広がっていく様子が近隣地域からでも確認できた。
綾里漁港で火災の様子を見ていた60代の女性は「これでは何日続くかわからない。雨に期待するしかない」と嘆いた。