
「フジ、グッジョブ(good job)だ」というコーチの言葉が、新鮮だった。
打者を抑えたわけではない。1回で2、3点取られた。それでも、「ストライクゾーンの真ん中高めにアタックできていたじゃないか。お前の仕事はそれだ」とたたえられた。
2023年春、藤浪晋太郎(30)が大リーグのアスレチックスに移籍して間もない頃のことだ。
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右腕が持つ160キロ超の直球を真ん中高めに投げれば、被打率は1割台前半というデータが出ていた。
詰まった打球が野手の間に落ちたり、うまく打たれたりすることはある。それによって失点しても、「そういう日もあるだろう」と割り切る。それが米国の考え方だ。
もし、日本だったら何と言われただろう? 「あそこで1球外しておけば……」。そんな言葉が思い浮かんだ。
失敗に対する寛容さ、挑戦に対する前向きさ。「過程」と「結果」を切り離して考える明快さに、藤浪の思考も自然と感化させられていった。
「失敗したらいいやん。失敗して反省して、また次に向かえばいいやんって」
なかなかコントロールできない自分自身と向き合って、9年近くたつ。
大阪桐蔭のエースとして12…