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湊かなえさんの本紙連載小説「C線上のアリア」が朝日新聞出版から単行本になった。「家庭内で女性が担うものとされている介護について、時代の移り変わりのなかで書いてみたかった」と語るサスペンス・ミステリーだ。
主人公は五十路(いそじ)を越えたばかりの美佐。両親を亡くした後、面倒を見てくれた叔母に認知症の症状が見られることから、山間の町を久しぶりに訪れる。だが、高校時代を過ごした瀟洒(しょうしゃ)な家は荒れ果て、ごみ屋敷と化していた。片づけを進める美佐は、叔母の人生に隠された秘密を知ることになる。
物語には美佐の現在、高校時代、そして叔母の若かりし頃の三つの時間が流れる。彼女たちの身には、女性のライフステージで起きそうなことがすべて起きる。嫁姑(しゅうとめ)の確執、出産をめぐるいざこざ、そして介護。時代は変われど、ささくれだった人間関係が呪いのように繰り返される。
「介護については、問題解決を家族の情とか絆とかに依存しすぎている気がします。もっと外の人に頼めばいいのに、感情論を持ち出すから、後ろめたさを感じる人が出てしまう」
介護を担う女性たちの心の声が響く本作は、同時にミステリーの名手によるエンタメ小説でもある。冒頭から周到に張られた伏線が終章で鮮やかに回収される。
「いま介護を受けている人にも、それぞれに人生の物語があったはず。そう思えば介護に対するとらえ方も変わってくるのではないでしょうか。介護に直面している人にも楽しんでもらえたら」(野波健祐)