写真・図版
「赤毛のアン」の文庫本を持つ茨木隆之介さん=才本淳子撮影

 「ことば」が心の支えになり、輝く時がある。本や映画、身近な人の話など、心に響いたことばのエピソードを作文にした「私の折々のことばコンテスト2024」(朝日新聞社主催)に2万7616作の応募があり、洛星中(京都市北区)3年の茨木隆之介さん(14)=奈良市=が中学部門で最優秀賞に選ばれた。「心にぱっと光がさした」という大切な言葉だ。

  • 今も心に残るばあばの「よかったね」 折々のことばコンテスト

 曲がり角をまがったさきになにがあるのかは、わからないの。でも、きっといちばんよいものにちがいないと思うの。=アン(モンゴメリ著・村岡花子訳「赤毛のアン」《新潮文庫》から)

 茨木さんが、この言葉に出会ったのは中学受験をした小学6年の時だ。「当時の僕にとっては、人生でどん底でした」と振り返る。

 ほかの中学校の合格発表を母と見た。スマホの画面に浮かんだ「不合格」の文字。涙でかすんだ。毎日塾に通い、遊びやゲームも我慢し、「合格」を手にしたいと3年間努力した。人生は思うようにならない、と絶望した。

 そんな時、母の茉衣子さんから「人生で一番好きな本」と手渡されたのが「赤毛のアン」だった。茉衣子さんは、かける言葉が見つからず、「気分転換になれば」という思いだったという。

 なんとなく読み始めたが、アンの強さに引き込まれ、あっという間に読み終えた。困難なことに対して、アンは軽やかに前向きに生き、努力を惜しまない。自分を犠牲にする意識はなく、人にとことん優しくできる。それがアンの強さであり、魅力だと感じた。

 「本の中で出会った言葉は、暗い気持ちで過ごしていたぼくの心にぱっと光を放ちました」

 茨木さんにとっての「曲がり角」は中学進学だった。その先には、充実した学校生活があった。自宅から往復3時間以上かけて通う。学業や学校行事、クラブ活動を通して、尊敬できる友人や先輩、先生に出会った。

 中学1年生の時、国語の先生から「折々のことばコンテスト」があることを聞いた。それを思い出し、この大切にしている言葉で作文を書こうと思った。

 「『曲がり角』はこれから先も、まだまだあると思う。どんな曲がり角にあっても、良いことがきっとあると思える感性を身につけ、前向きに進んでいきたい」

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