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論説副主幹 山口進

 私たちの思考は、いまの社会にしばられていると同時に、長い歴史が積み重なった基盤の上に成り立っているものでもあります。

 これまで3回、「背骨」というたとえを使いながら、文章を書く際に独立したものの見方をどう実現できるか、考えてきました。ただ、「独立」といっても、ゼロから生み出されるものではないのもまた当然です。自らの思考の成り立ちを根っこから省みて、深く考える文章を書くためにも、歴史の海に潜ってみることは有益です。

 例えば、時を超えて読み継がれてきた古典を、専門家に習ったり仲間で集まったりしながら精読してみる。あるいは、興味を持った分野でどのような進歩や変革があったのか、現代から過去にさかのぼって自分の目で跡づけてみる。方法は無限にあります。

 この作業は、すぐに何かに役に立つわけではありません。即効性はないと割り切るほうがよいでしょう。しかし、何かにつけ機敏さばかりが求められ、一時の風評に右顧左眄(うこさべん)しがちな世相の中で、立ち止まり、長い時間軸でものごとを考える確かな支えになります。

(取り上げた記事へのリンクが文末にあります)

 また、いまを生きる問題意識…

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