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久保田聖子校長が大腸がん経験者としての経験や気持ちを話し、主治医の矢野雷太・広島記念病院消化器外科医長ががんの知識について説明すると、子どもたちが真剣な顔つきで聞いた=広島市立早稲田小学校

 主に保健体育の授業で実施されている「がん教育」。国は、がん経験者や医療者ら外部講師の参加を後押ししているが、地域によって差があるのが現状だ。講師の活用を進めるにはどうしたらいいか、実践者の言葉から考える。

 「校長先生は実は4年前にがんの手術をしました。この授業をしようと思ったのは、先生がいっぱい後悔したことがあるからです」。1月にあった広島市立早稲田小6年生のがん教育の授業は、校長の久保田聖子さんのこんな一言から始まった。

 久保田さんは4年前に大腸がんの手術をし、抗がん剤治療を受けた。教頭時代に体の不調に気づき、人間ドックも「要精密検査」に。だが、多忙で受診が遅れ、検査に行ったのは校長になってからだった。「後悔する人を一人でも減らしたい」。そんな思いから、自身の主治医で広島記念病院消化器外科医長の矢野雷太さんに講師を頼み、授業を行ってきた。

 この日は、今もひざから下がしびれることや小さな段差でもつまずくことに触れ、「もっと早く検査や治療をしていたら、つらい抗がん剤治療をしなくてよかったかも」。自分と同じ後悔をしないよう、がんを学ぼうと呼びかけた。

 続いて、矢野さんが早期発見やがん検診の大切さに触れながら「がんへの理解を深めることが誰にとっても暮らしやすい社会につながる」と訴えると、子どもたちが真剣な表情でメモを取った。

 授業の最後に、久保田さんは…

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