ポップス、ドラマ、文学など、韓国文化が多くのファンを引きつけていますが、ミュージカル上演も目立ちます。韓国から多くのミュージカル作品が生み出されるのはなぜか。東宝演劇部チーフプロデューサーの小嶋麻倫子さんに聞きました。
- 世界を席巻するK-POPや韓国映画 後押しする文化政策、日本は?
――日本で初めて本格的な翻訳ミュージカルが上演されたのは1963年の「マイ・フェア・レディ」(江利チエミ主演)、東宝の製作でした。以来60年以上、海外ミュージカルはニューヨーク・ブロードウェーから来る作品が中心でしたが、最近、韓国発の作品が増えました。
「韓国はミュージカル創作がとても盛んです。大劇場向けの作品が積極的に創作される一方で、200近い劇場がひしめくソウルの大学路では、小規模な作品が次々と登場しています。日本でもこの十数年、韓国ミュージカルの増加が目立ちます。東宝では2008年の山崎育三郎さんらが出演した『サ・ビ・タ』を皮切りに、他社との共同製作も含め、いくつも上演してきました。『フランケンシュタイン』のような大劇場の作品も、『メイビー、ハッピーエンディング』『ダーウィン・ヤング』『ナビレラ』といった中小規模の作品もあります」
――韓国作品の強みはなんでしょう。
「やはり同じアジアの文化圏なので日本人の琴線に触れやすいことがあると思います。また、あらゆる面でコストがかかるブロードウェーでは舞台作りにかかる費用が高騰し、上演権を取得するハードルが上がっているのに比べ、韓国の作品はそこまで高額ではないので、手を出しやすいことも確かです。また、アメリカやイギリスの新作は、演出や舞台装置、衣装、照明プランなどを現地と同じに複製する『レプリカ』上演を求められる場合が多いですが、韓国作品は基本、日本独自の演出ができ、それも上演しやすい点です」
――「レプリカ」だと海外から大勢のスタッフを招く必要があり、その経費もかさむでしょう。オリジナル作品の良さを楽しめますが、制約のない「非レプリカ」は日本の演出家やスタッフが自由に腕をふるえる魅力がありますね。韓国政府は、文化輸出に力を入れていますが、ミュージカルにもそうした後押しを感じますか。
「それは大きいと思います。『韓国芸術経営支援センター』という政府組織があり、毎年ソウルで見本市を開き、中国などからプロデューサーを招いています。また、海外で複数の作品の一部を実際に上演して見せるショーケースも実施していて、東京でも一昨年、初めて開催されました」
作り手は大学教育から、ブロードウェーに学んで
――日本の観客にも受け入れられるミュージカルが、韓国で数多く生まれているのはなぜでしょう。
「作り手を育てる教育システ…