トランプ米大統領が1日に表明したメキシコ、カナダ、中国に対する関税の発動は、同氏の「初志貫徹」を強烈に印象づけた。想定される副作用などお構いなしに関税発動に突き進んだトランプ氏。関税は「脅し」に過ぎず、実施は見送られるのではないかという金融市場などの観測は甘かった。
- トランプ氏、関税発動の大統領令 カナダ・メキシコ・中国に4日から
「何もない」
1月31日夕。ホワイトハウスで記者団から、3カ国が高関税を免れる道はないのかと問われたトランプ氏は短くこう答え、次の質問を促した。関税発動には妥協の余地が一切ないというメッセージだった。
トランプ氏は昨年の大統領選中から、不法移民や合成麻薬フェンタニルのメキシコやカナダからの流入に不満を訴え、高関税で対抗すると訴えていた。大統領選後の昨年11月下旬の時点ですでに、今回の関税の骨格である「カナダ・メキシコに25%」「中国に追加10%」という案をぶち上げていた。
それでも、金融市場を中心に楽観論が漂い続けていた。
高関税は輸入価格の上昇を通じて、米国の物価高(インフレ)を再燃させ、米国民の生活を苦しくしかねない。高インフレを抑えられなかったことでバイデン前政権は世論の離反を招き、最終的に大統領選で敗れた。
そのインフレの恐ろしさを熟知するトランプ氏も、最後は翻意するに違いない。高関税はあくまでカナダやメキシコ、中国を交渉のテーブルにつかせるための脅しに過ぎず、本当に発動する気はない――。
外れた市場の見通し
そんな「合理的」な判断を期…