(30日、プロ野球 横浜DeNAベイスターズ2-1中日ドラゴンズ)
クイック気味に投げ込む右下手からの球が、打者の目を幻惑する。DeNAの中川颯は、七回途中まで投げて1失点。4年目、移籍した新天地でプロ初勝利を挙げた。
まるで「撒(ま)き餌(え)」をするような投球だ。打者にとって絶好球に見える、ベルト付近へ浮き上がる球。が、ここから曲がる。沈む。逃げる。よく見えるから、打者にとっては始末に悪い。球を追いかけた打線は、凡打の山を築くはめになった。
神奈川・桐光学園高から立大を経て、2021年にオリックス入り。1軍では1試合に登板しただけで、昨オフ、戦力外通告を受けた。
だが、移籍したDeNAでチャンスをつかんだ。主に中継ぎで経験を積みながら、少しずつ調子を上げてきた。この日が2度目の先発マウンド。4月10日に救援し、5回を投げて1失点だった中日を相手に再び好投して、力を証明した。
「(DeNAに)拾っていただいた。恩返ししたかった」。両手で、しっかりとウィニングボールを握っていた。(山田佳毅)