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取材に応じる与党・国民の力の安哲秀議員=2025年1月17日、ソウル、太田成美撮影
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 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は昨年12月に出した「非常戒厳」をめぐり国会に弾劾(だんがい)訴追され、罷免(ひめん)の可否を判断する審判が憲法裁判所で続いています。弾劾訴追は野党が主導しましたが、与党・国民の力からも複数の賛成者が出て、2度目の採決で可決されました。与党から賛成に回った1人の安哲秀(アンチョルス)議員にその理由などを聞きました。

安哲秀氏

アン・チョルス 2012年の大統領選に無所属で立候補を表明し、当時の最大野党・民主統合党(現・共に民主党)の文在寅氏との候補一本化の末に辞退した。その後、国会議員に当選して中道政党「国民の党」を結成し、17年の大統領選に立候補。22年の大統領選では、立候補を取り下げて、尹大統領が当選した。現在は与党・国民の力に所属。

 ――弾劾訴追をめぐっては1度目の採決となった昨年12月7日、大半の与党議員が議場から退出し、弾劾案が不成立となりました。その1週間後の14日の採決では、与党議員は出席に転じ、そのほとんどが反対しましたが、賛成多数で可決されました。安議員はいずれも賛成票を投じていますが、なぜ賛成したのでしょうか。

 最も重要な原則は憲法と法治主義です。憲法77条は、戦時や事変、それに準ずる国家非常事態では、軍隊を動員して秩序を維持できるとしています。でも、今は「非常時局」なのでしょうか。これは憲法違反だと判断しました。(尹大統領が主張するような)「警告」の意味で出せるともされていません。

 また、非常戒厳を出す際には直ちに国会に通知する必要があり、国会の在籍議員の過半数が賛成すれば戒厳は無効にできます。つまり、国会を通さなければならないのですが、軍を動員して国会での採決を阻止しようとしました。

 この二つの理由で弾劾訴追に賛成しました。憲法裁で、専門家に判断してもらわなければならないと考えました。

 議員総会でこうした理由を説明しました。親交のある同僚議員は「頑張れ」と肩をたたいてくれました。

 ――孤独は感じませんでしたか。

 いいえ。国会議員1人は約2…

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