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タイの空の玄関口・スワンナプーム空港の到着ロビー=2025年1月29日、バンコク、伊藤弘毅撮影
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 中華圏の旧正月「春節」に伴う中国の大型連休が始まり、東南アジアの観光地は書き入れ時を迎えている。だが、中国人に人気のタイの観光地では、団体客らが予約を取り消す動きが見られる。ミャンマー東部で中国人俳優が失踪後に丸刈り姿で救出された騒動を受け、経由地だったタイへの渡航は「危険だ」と忌避する動きが中国で広がったためだ。

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 旧暦の元日にあたる29日朝。首都バンコクの空の玄関口・スワンナプーム空港に、中国・海南島を拠点とする海南航空の便が到着すると、太鼓やドラの音とともに獅子舞が乗客を出迎えた。

 ただ、到着エリアには欧米系の客の姿が目立ち、東アジア系の客の姿はまばら。携帯電話のシムカードを販売する店の男性店員は「1月に入って、客の数は大きく減っている。特に中国系の客が少ない」と話した。

「約1週間、予約が一切なくなった」

 バンコクで主に中国の団体客向けツアーバスを運行する企業の男性従業員は、中国人俳優の騒動発覚後「約1週間、予約が一切なくなった」と話す。今年の春節は、中国からの予約が前年より約2割減っているという。

 現地報道によると、影響が大きかったのは、騒動発覚直後の1月上旬とみられる。タイの格安航空会社「ライオン・エア」の最高経営責任者によると、春節期間中に運航予定だった中国からのチャーター便の約2割に相当する計40便が欠航。多くが、寧波や合肥などの地方都市からプーケットへの直行便だったという。

 コロナ禍で外国人観光客がほぼ「蒸発」した後、タイは観光産業の立て直しに注力してきた。2024年の外国人客数は3555万人で、過去最高だった19年(3992万人)の水準に迫りつつあった。その矢先に、ミャンマー国境での騒ぎに冷や水を浴びせられた形だ。24年の外国人客のうち、国別では中国が18.9%で最多なだけに、春節への期待は大きかった。

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