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 大阪市生野区で2018年、聴覚支援学校に通う井出安優香(あゆか)さん(当時11)が重機にはねられ死亡した事故を巡り、重機の運転手や勤務先だった建設会社に、健常者と同額の賠償を認めた20日の大阪高裁判決の理由の要旨は以下の通り。

  • 難聴の子が得られた利益「健常者と同額」 高裁「ささやかな配慮で」

 【争点】

 先天性の聴覚障害があった安優香さんが死亡しなければ、将来得られたであろう逸失利益の算定が最大の争点だ。大阪地裁判決は、安優香さんに将来様々な就労の可能性があったとする一方、障害で他者とのコミュニケーションが制限され、労働能力も制限しうることは否定できないとして、全労働者平均賃金の約85%とするのが相当とした。

 【安優香さんの発達】

 音の情報を伝達する生理学的な機能である末梢(まっしょう)系の「聴力」と、伝達された音の情報を分析し、言語や音楽として理解する中枢系の「聴能」を合わせたのが「聴覚」だ。

 安優香さんの病名は「両側感音難聴」で、末梢系のうち感音系の方に生理学的な機能障害があった。各聴力検査の結果、ささやき声での会話の音声は聞こえにくいが、通常の会話音声の大きさは聞こえており、補聴器を使うことで通常の会話音声を知覚できていた。

 安優香さんは、音声に限らず手話や文字などを使って、情報を中枢系まで届ける教育を両親や支援学校から受けていた。順調に中枢系の能力を発達させ、年齢相応の日本語の語彙(ごい)や文法といった知識を獲得し、小学5年生として複雑で高度な日本語文法を運用でき、学力も同年齢の児童全体の平均的な成績のレベルだった。

 対人関心、学習意欲が高く、他者に積極的に関わる能力があった。その能力を使い、色々な人とコミュニケーションをとり、関わることができていた。

 【逸失利益の算定】…

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