大学で活躍し、欧州の5大リーグでプレーする――。
23歳以下(U23)日本代表で唯一の大学生、内野航太郎は、同じ筑波大蹴球部出身の憧れの先輩、三笘薫(ブライトン)が示した道を意識してきた。
「入学する前から、三笘さんの記事を見させてもらって、筑波に行けば自分を鍛えられると思っていた」
横浜F・マリノスの育成組織で育った19歳。トップ昇格はならず、次の進路として筑波大を選んだ理由は、「個」の力を伸ばすことに専念できるから、だった。
三笘も取り組んだ陸上競技の研究室に志願し、走り方を学ぶ専門トレーニングの指導を受けている。蹴球部のテクニカルアドバイザー、中西哲生さんとの自主練習にも時間を割き、シュートの練習を繰り返す。
筑波大蹴球部の小井土正亮監督が内野航について、こう語っていたことがある。「三笘(薫)と同じ。自分が成長するためにやるべきことを明確に理解している」
筑波大のトレーニングは強制されることが少なく、自主性が尊重される。内野航は「自分のやりたいことに専念できる環境だし、逆に、やらなければなにも成長しない。自分にはすごく合っている」と話す。
大学時代の三笘は、ドリブルや1対1をひたすら磨いた。内野航がこだわったのは、ゴール前でのバリエーションを増やすこと。大学1年目、相手に研究され、得意としていたクロスに合わせる形が封じられることが多くなった。すると、ペナルティーエリア付近からのシュート練習を繰り返し、ボールを持ったときでも得点できる形を増やした。
「今までは、周囲のおかげで点が取れていた。さらに上にいくには、個の能力でも決められるようにならないといけない」
半年前は「オリンピックに行けるとは思っていなかった」。ただ、昨年9~10月に中国で開かれたアジア大会への追加招集でチャンスを得ると、次々と得点を決めて大岩剛監督の期待に応えた。
パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU23アジア杯でも、準々決勝のカタール戦で初得点。FWの意地を見せた。
内野航には、関東大学1部リーグで続けている得点パフォーマンスがある。好きな人気アニメ「進撃の巨人」を意識し、右拳を胸に当てるポーズだ。「進撃の巨人のポーズといえば自分、というくらい広めたい」。貪欲(どんよく)にゴールを狙う身長185センチの長身ストライカーに注目だ。(ドーハ=照屋健)