2012年に長崎県対馬市の観音寺から盗まれ、韓国に持ち込まれた県指定有形文化財「観世音菩薩坐像(ぼさつざぞう)」をめぐり、寺の元住職が訪韓して、24日に返還手続きが行われることになった。対馬市教育委員会などによると、仏像は返還後、これまで所有権を主張していた韓国の浮石(プソク)寺に貸し出す形をとって法要が行われ、5月ごろに対馬に戻ってくるという。

 観音寺の所有権を認めた23年の韓国大法院(最高裁)判決を踏まえ、仏像は現在、韓国中部・大田市にある国の施設で保管されている。来週にも訪韓して、13年ぶりに対面する元住職の田中節孝さん(78)は「まずは、ご苦労をかけましたと声をかけて、手を合わせたい」という。

 浮石寺側が昨年、返還の条件として法要の開催を打診していたが、観音寺側は返還される公的な保証を求めていた。今回の返還手続きで、正式に観音寺側の所有であることが文書などで確認されるという。

 仏像をめぐっては、13年に韓国の窃盗グループが検挙された。浮石寺は「14世紀に倭寇(わこう)に略奪された」と主張。大法院は23年10月、倭寇による略奪を認める一方、長期にわたって占有してきた観音寺の所有権を認めた控訴審判決を支持していた。

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