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オロンコ岩の前にずらりと引き上げられた漁船の前で笑顔を見せる藍さん=2024年12月3日午後3時38分、北海道斜里町、鈴木優香撮影

Be Ambitious!:1 藍屏芳(ランピンファン)さん 台湾→知床

 北海道・女満別空港からウトロに向かうバスの中。左側の窓から見える流氷の美しさに思いがこみ上げた。知床に戻ってくるのは3回目。

 「帰ってきたな。やっぱりここに住みたいな」

 台湾出身の藍屏芳(ランピンファン)さん(33)が初めて知床に来たのは10年前。テレビでたまたま見た流氷に心を奪われた。

 故郷は台湾の最南端・屏東(ピンドン)県で、パイナップルやパパイアが1年中収穫できる温暖な気候だ。

 10代の頃、台湾は空前の日本ブームだった。高校生のうちから、日本語の新聞を読み解けるまでに語学力を磨き、1年間のワーキングホリデーで日本各地を訪れた。

 その一つが知床だ。だが、流氷ツアーガイドの仕事で言葉の壁にぶつかる。一緒に働く船長は60代以上の元漁師。たくさん話しかけてくれるが、なまりが強く全然わからない。無線を通すと、なおさらわからなかった。

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2015年にワーキングホリデーで知床に初めて来た頃の藍屛芳さん=藍さん提供

 それでも1カ月半暮らしてみると、人の温かさこそが、本当の魅力だと感じるようになった。

 一度は台湾に戻ったが、2016年に就労ビザで2回目の知床へ。漁師ことばを理解するまでに時間がかかったが、おいしいものが手に入ったら「食べて」、坂道を歩いていたら「車乗るか?」、散歩をしていたら「トウキビ持ってけ」。やっぱり温かい。

 でも、2年間暮らして不安になった。「楽しいままでいいのかな? もう少しチャレンジしてみよう」

 夢をかなえたい。パッションを追い求めたい……。そんな思いで、海の向こうから北海道にやってきたYOUたち。次回はフランスから厚真町に移住し、本場のパン屋を開業した夫婦の物語です。1月17日午後6時、配信予定です。

 カナダでのワーキングホリデ…

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