「もっとぐっと引かんと、意味ないぞ」
1月上旬。熊本県八代市にある八代清流高で、園川一美(61)が野球部の選手に声をかけていた。
園川はプロ野球ロッテで通算76勝を挙げたサウスポーだった。
現在は同県嘉島町のスポーツショップで働く傍ら、2015年秋から同校で月に5、6回ほど選手を指導している。
野球部の子どもたちは現役時代の姿を見たことがない。だが、練習に園川が現れると空気はぴりっとする。同校監督の山崎清貴(61)は言う。
「すごい投手というのは動画を見たり、私から話をしたりして理解している。あのイチローと何度も対戦したことがあるんだよと」
ロッテ時代の園川の対戦相手で、最も名前が挙がるのがイチローだろう。
その中でも、1994年9月20日の対戦は特別だ。
この日、オリックスに所属していたイチローは、プロ野球史上初のリーグ200安打まであと「3」に迫っていた。対戦相手のロッテの先発が園川だった。
「自分は普段通りに入ったつ…