米中対立の波が押し寄せる太平洋西部の米領・北マリアナ諸島。その一つ、サイパン島の西部にある最大の繁華街ガラパンには、異彩を放つ巨大な建造物がある。

 インペリアル・パレス・カジノ。白い建物のあちこちに、金色の装飾がほどこされているが、夜に明かりがともることはない。

 香港のインペリアル・パシフィック・インターナショナル(IPI)社が2019年、巨大カジノホテルとして建設を始めた。ホテル1階のカジノと隣接する戸建てタイプの高級宿泊施設は営業を始めていたが、新型コロナウイルスの感染拡大のため21年にはホテル建設が中断した。IPI社は現在、米連邦破産裁判所に破産申請中で、建設再開のめどは全く立っていない。

写真・図版
2021年から工事が中断したままになっているインペリアル・パレス・カジノ=2024年8月19日、サイパン、牧野愛博撮影

 カジノは経済的な苦境に立つサイパンを活性化させる切り札だった。

【連載初回はこちら】原爆発進基地から対中拠点に 80年の時が変えた太平洋の島テニアン

 米・北マリアナ諸島のサイパンとテニアンは戦前、日本領として栄えました。第2次世界大戦の日米激戦の末、原爆投下など日本本土爆撃の発進基地となった両島。あれから80年がたち、米中対立の波が押し寄せています。今回は、全3回の現地ルポの2回目です。

■日本の5倍以上だった中国人…

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