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東京都内のスーパーでは、食料品や日用品の値下げが強調されていた=2024年10月

 インフレが収まらない。食料品をはじめ身近な商品が、値上がりしている。いつまで続くのか……とも思うかもしれないが、3年半ほど前まではデフレの傾向にあった。経済がどうなるか、未来を正確に見通すのは難しい。だからこそ、「まずは家計の状況を把握しましょう」と、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。家計簿をつけることは、主に年金で生活する65歳以上の人にとっても節約にも役立つと語る。

書店で見比べよう

 家計簿は、どうやって選ぶ? 昔ながらの冊子タイプなら、書店に行って見比べてみましょう。たぶん1月末ぐらいまではたくさん並んでいます。手に取って、自分が続けられそうなものを選ぶといいですよ。書き込む項目が多いか少ないか、といったチェックポイントがあるでしょう。見つからなかったら、大学ノートや表計算ソフトで自作したって大丈夫。

 最近はアプリもあります。アプリは冊子と違って、自分に合うものを探すのに手間がかかるかもしれません。見比べるのが難しいですからね。気に入ったアプリがあれば冊子と併用する手も。アプリはレシートの情報を取り込むのが簡単なので、ひとつずつ書いていく手間は省けます。件数が多い食費と日用品費だけはアプリで管理するのです。

 よくあるのは「孫に小遣い」「香典を包む」などと備考欄に書いて、日記になってしまうこと。ある期間で何にいくら使ったのか、決算をして振り返ることが大事です。

 そして決算をする前、最初に決めるべきは予算。旅行でも、予算を決めないと使いすぎてしまうでしょう。まずは収支を1カ月単位で見積もります。収入は年金だけなら、原則として偶数月の15日にもらえるから「今月の年金収入」と「前月の年金の残り」という項目をつくる。年金の金額は、すぐにわかりますよね。

 支出の項目は、お金の出どころを基準に考えます。「銀行口座から引き落とし」と「財布から出る現金とクレジットカードの利用」。さらに「それ以外の支出」も必要ですね。

 「銀行口座」は光熱費、電話料金、保険料など。住宅ローンの返済も含まれます。「財布とクレジットカード」は、食費、日用品費、医療費などになるでしょう。日常的な支出と言えます。「それ以外」は冠婚葬祭やレジャーなど定期的ではない支出だと考えてください。

 銀行の通帳とクレジットカードの利用明細を見れば、これまで使ってきた大まかな金額がわかります。それをもとに予算を決めていくといい。各項目の金額を足すと、支出総額が見えてくるでしょう。収入を上回っていれば、その部分は貯金、つまり老後資金の取り崩しになります。

決算で見直しを

 1カ月後には決算。実際に使った金額を予算と比べてみましょう。1、2カ月やってみると、老後資金が将来どう変化するか、つかめるはずです。想定よりも減り方が急なら、支出の抑制に取り組まないと。

 最初の一歩は保険と携帯電話の見直し。保険では不要と思える保障を外したり、保険金額を小さくしたり。携帯電話では通信会社を変えたり、割安なプランを選んだり。保険や携帯は固定費。早ければ翌月から、見直した分だけ自動的に支払いが減る。日々の努力はいりません。これができれば、自信もつきますよ。

 それでも不十分だったら食費など変動費の節約。予算の範囲内でやりくりすることに尽きます。だけど項目ごとに「何%減らす」と枠をはめてしまうと、精神的にもしんどくなるみたい。家計簿をつけて決算することで、削れる部分を見つけるのがいいでしょう。

まだある食費・日用品費のやりくり

 月の途中でも、できることが…

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