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 夫妻が次女と夫の姉を殺害したとして逮捕された事件で、警視庁は25日、親族で3人目となる夫の父親に対する殺人容疑での逮捕に踏み切った。父親の遺体は死後に火葬され、最も重要な「証拠」がないなかでの捜査。警視庁はどのように立証の手がかりを得たのか。捜査関係者らへの取材で追った。

 警視庁や捜査関係者によると、死亡したのは細谷健一容疑者(43)の父、勇さん(当時73)。勇さんは2017年3月以降に体調を崩し、入退院を繰り返した後の18年6月、病院で死亡した。当時は事件性がないとして、遺体は火葬された。

事件発覚のきっかけは次女の「不審死」

 一連の事件発覚のきっかけは昨年3月13日。健一容疑者と妻の志保容疑者(38)の次女・美輝ちゃん(当時4)の死亡だ。救急搬送先の病院で死亡したが、不審な点が複数あり、犯罪の有無などを調べる司法解剖が行われた。

 その結果、死因は「中毒死」と判明。体内からは抗精神病薬の「オランザピン」と、化学物質「エチレングリコール」に由来する成分が検出された。エチレングリコールは、車の不凍液などとして主に工業用に使われ、無色無臭で甘みがある液体とされる。

 いずれも自ら服用する理由がなく、警視庁は何者かが摂取させたとみて水面下で捜査を開始。間もなく、親族がほかにも短期間で次々と亡くなっている事実が判明する。

 美輝ちゃん死亡の5年前、健一容疑者の母親に続き、4月には姉の美奈子さん(当時41)、6月には勇さんが立て続けに亡くなっていた。

 当時、美奈子さんの死に不審な点はなかったが、行政解剖された際に臓器の一部が保管されていた。警視庁がこの臓器を調べたところ、エチレングリコールの摂取後に現れる代謝物質が検出されたという。

 両容疑者がエチレングリコールを購入していたこともわかり、トラブルの有無なども踏まえ、両者の死亡に両容疑者が関与したと判断。今年2月14日に美輝ちゃんに対する殺人容疑で2人を逮捕し、3月6日に美奈子さんへの同容疑で再逮捕した。

遺体なき殺人事件、逮捕の決め手は生前のカルテ

 勇さんについても、捜査1課…

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