えっ、お前んとこキムワイプじゃないの!?

 実験器具などのふき取りに活躍する紙ワイパー「キムワイプ」(日本製紙クレシア製品)は2024年で販売55周年。研究者には抜群のブランド力で浸透しており、100年先も科学実験のお供としての地位は安泰にみえる。だが、キムワイプの取材を重ねてきた記者のもとには聞き捨てならない情報が複数寄せられていた。

 「うちでは『プロワイプ』を使っていますよ」と。

 プロワイプとは一体何者か。取り寄せてみると青色を基調とした箱や中身の紙ワイパーの大きさはキムワイプとほぼ同じ。製造はティッシュなどの「エリエール」ブランドを有する大手の大王製紙だ。同社広報課によると、00年から産業用ワイパーに参入し、07年からプロワイプブランドとして展開しているという。ネット通販で見ると、値段もほぼ変わらない。

キムワイプとプロワイプ=大阪市
サイズもほぼ同じなキムワイプとプロワイプ=大阪市

 完全な競合品の出現。果たしてどちらが優れているのか。キムワイプ愛用者なら必ず抱く疑問に全力で挑んだのが、電気通信大(東京都調布市)だ。総額1億円以上になる機器を使って徹底比較した動画を、8月18日の産業用ワイパーの日(818〈わいぱー〉)に合わせて制作した。

キムワイプとプロワイプについて語る電気通信大の石垣陽特任教授=東京都調布市、電通大提供

専門性の高さが特色の電気通信大、惜しみなく機器投入

 第1ラウンドは蛍光X線分析装置による解析。X線を測定する物質に当てると、物質を構成する原子固有の波長で返ってくるため、組成がわかる。小林利章・学術技師によると、両者とも主成分はセルロース。これは紙なので当たり前だが、白くする目的などで使われる添加物の配合割合に違いがみられたという。「キムワイプには酸化亜鉛を推定させる材料が多く、プロワイプはカルシウム系が多く入っているようです」。企業秘密の内側が垣間見えた。

蛍光X線分析装置の中。試料はロボットアームで照射エリアまで運ばれる=東京都調布市、電気通信大提供

 実用面での比較としてまず、引っ張り強度を測定した。使ったのは独ツビックローエル社の万能材料試験機。最大10トンの力で対象を引きちぎることができる怪物だ。

 本来は金属などの強度を測るのに使われる機器でキムワイプ、プロワイプが1枚でどれほど耐えられるか試験をした。

引っ張り強度の試験を開始したキムワイプ=東京都調布市、電気通信大提供
引っ張り試験に臨むプロワイプ=東京都調布市、電気通信大提供

 徐々に力を上げていき6分前…

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