すき焼きやサバのみそ煮、炊き込みご飯、ミネストローネ――。料理研究家の村上祥子さん(82)は、多彩な料理を電子レンジで作る方法を生みだし、レンチン調理の「第一人者」として活動してきました。村上さんにレンジとの出合いと、「大人の食育」について聞きました。(大坪実佳子)
レンジを知ったのは1970年ごろ、大分市に住んでいた頃でした。お向かいの奥さんが「実家に帰るとレンジがあって、何でもすぐに温められていいのよ」と言っていて。サラリーマンの家庭には高嶺(たかね)の花だったので、もうほしくてほしくて仕方なかったんです。
そんなとき、たまたま市内の体育館で家電ショーが開かれました。家電ショップの社長さんが「あっという間に温かくなるよ」と言うから、家に冷凍のグラタンを取りに帰って「これを温かくして下さい」とお願いしたのですが、待てど暮らせど温まらない。
「これじゃ、オーブンにお湯を張った方が早いわ」と思って帰宅しました。そしたら後日、社長さんが私の家を調べてやって来て「ショーに出した後だから格安で譲ります。そのかわり、わかったことを僕に全部教えてください」と。社長さんもレンジのことがよくわかっていなかったんですね。
そこから試行錯誤が始まりま…