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5年25億円の交付が説明された「共創会議」=2024年10月31日午後5時3分、青森市、江湖良二撮影

 経済産業省は10月31日、原子力関連施設が立地する地域の将来像を青森県内の首長らと議論する会議で、要望のあった振興策に今後5年間で最大25億円を交付する方針を示した。避難道の整備などで先行きが見えない事業もあり、首長から具体化を求める意見も出た。(江湖良二)

 下北半島に集積する原子力関連施設の稼働は、2011年の東京電力福島第一原発事故後、滞っている。この影響もあり自治体内総生産額は、六ケ所村が11年の約3500億円から直近3年間は約2500億円に、東通村は11年の約260億円から12年度以降は約200億円に減少。地域経済が打撃を受けている。

 原子力関連施設との「共生」をめざす地域を支援しようと設置されたのが、国や自治体、電力事業者からなる「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」だ。青森県側からの要望に対し、7月に会議で、経産省から振興策の「基本方針」が示されていた。

 この日は同方針で示された内容に、取り組み時期などを記した「工程表」が提示された。

5年で25億円を交付方針

 経産省は各種支援策について、取り組み時期を今後おおむね5年以内の「短期」と、今後5年以上の「中長期」に分類した上、実施段階について「事業の着手・実行」と「事業の実現可能性の検討等」に振り分けた。「短期」については、各種交付金や補助金制度を活用し、単年度5億円を上限として5年間、最大25億円を交付する方針だ。

 「短期」として示されたのは、使用済み核燃料の中間貯蔵が11月にも始まるむつ市の懸案だった「むつ総合病院の新病棟建設事業」や、「むつ市デジタル防災センター整備事業」、「防災機能を有した道の駅整備事業」など=表。大間町と北海道函館市を結ぶフェリー「大函丸」の更新には、2025年に検討着手する。

 「中・長期」で、宮下宗一郎知事が「県全体に配慮され、大きい」と評価したのが、GX(脱炭素、グリーントランスフォーメーション)関連産業の誘致、振興だ。使用済み核燃料を保管する金属キャスクの製造など「県内での原子力サプライチェーン構築、集積化を促進」と明記された。

避難道「いつできるのか」

 ただ、「中長期」の予算額は示されていない上、デジタル・AI技術を活用した「しもきたハイテクフードバレー推進事業」や「つくり育てる漁業への転換」などは、「実現可能性の検討」にとどまる。会議では「財源確保含めた推進体制のあり方が極めて重要」(六ケ所村の戸田衛村長)との指摘が相次いだ。

 また、避難道の整備など巨額の予算が掛かる事業の具体化にも至らなかった。会議では県町村会長の小又勉・七戸町長が、地元の要望が強い下北半島の道路整備について「短期とか中・長期とか非常にあいまいで、じゃあいつできるのか」と批判。県管理の国道整備について、「避難道としては完全ではなく、脆弱(ぜいじゃく)。国が直轄して整備すべきだ」と重ねて求める場面もあった。

 基本方針と工程表は会議で了承を得た。今後は年1回ほど同会議を開き、事業の進捗(しんちょく)を確認するという。宮下知事は「今日は一つの節目だが、ここからがスタートだ」と強調した。

工程表に明記された主な事業と取り組み時期

・むつ市デジタル防災センター→短期

・むつ総合病院新病棟建設→短期

・基幹道路の整備促進→短、中・長期

・原子力産業への地元企業の参入→短期

・核融合原型炉の誘致→短期

・しもきたハイテクフードバレー…短期

・冷凍加工団地の整備…短期

・防災機能を有した道の駅整備→短期

・移住定住の促進→短期

・原子力関連産業との共生における次世代人材育成→短期

※短期=今後5年以内/中・長期=今後5年以上

※→=着手・実行/…=事業の実現可能性の検討

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